omoyap.jpg面矢慎介

■私の道具研究の楽しみ
 個人的には、やはり道具の「形」(デザイン)への興味があります。それぞれの道具が固有の形をしていて、いったい何でこんな形をしているのだろう、と興味がそそられませんか。
 実は、それぞれの道具の形にはみな何かしらの意味があります。意図的にそうデザインされた場合もあるでしょうし、民具のように誰が決めたわけでもなく、いつのまにか「自然に」その形になっている場合もあります。それぞれの形は特定の機能が意図されている場合もあり、あるいは装飾(美しさ、かっこよさ)のためにその形になっていることも、あるいは単に昔からそうだから(つまりもっぱら伝統の継承のために)その形にしていることも、あります。
 こういう「形」の背景(その形が成立した理由)などを考えながら、身の回りの、特に近代以降の家庭用製品について、その歴史的な変遷を追いかけています。身近な国内の事例ばかりでなく、海外諸国での発展と比較しながら、道具の近代化にともなってデザインがどう変わってきたのかを跡づけたいと思っています。
 また、道具の行き着く先としての家庭内のモノの持ち方/家の中での置かれ方(道具の配置状況の実態)にも興味があります。現代日本における道具の集積が各家庭でどのような家庭内景観をもたらしているのか、という興味です。こちらは大学の地元・彦根の旧城下町の町家を事例として、考現学的なスケッチ手法で調査を続けています。こうしてみると、私の研究テーマのキーワードとしては「道具」、「デザイン」、そして「生活」の3つでしょうか。
 これらを日本とは違う文化のなかで実地に見て来る海外「道具探検」も面白いですよ。私のこれまでの「探検先」としては、3年ほど住んだイギリスのほか、アメリカ、韓国、そして学生時代に文化人類学的調査に連れて行ってもらったミクロネシア・ポナペ島などがあります。
 こんなに面白い研究分野は他にめったにありません。仲間がいればさらに楽しさが増すでしょう。同好の方、是非ご一緒しましょう。

■略歴
 1954年群馬生まれ。千葉大学で工業デザインを学び、GKインダストリアルデザイン研究所に入所、GK道具学研究所で山口昌伴氏(現・道具学会会長)の下、道具に関わる研究調査業務に携わる。この間に英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザイン史を学ぶ。1995年から滋賀県立大学の教員に。担当科目に「比較道具論」、「道具デザイン史」、「道具デザイン演習」、「道具デザイン特論」など。現在、人間文化学部・生活デザイン学科長。

(2012/06)