道具学への招待 vol.151 イギリスのそっくり掃除機

i151.jpgこれらは1930年代頃のイギリスの掃除機。右はおなじみのフーバー社製。イギリスでは、米国フーバー社が早くから電気掃除機市場を支配し、写真にみるようなアップライト型が定番となった。イギリス英語では‘hoover’が「掃除機をかける」という意味の動詞になったくらいである。
では左は……? これは、電動のアップライト型に似せて作られた手動の掃除機である。中央部にはモーターの代わりにファンが入っていて、床上を押して行くと、下にある車輪に連動して内部前方のブラシが埃を掻き出し、さらに中央のファンが連動して埃を吸い込む、という仕組み。
このような「電動そっくり」の手動掃除機は1930年代末まで大きな市場があった。フーバー社が「カーペットの中には不潔な埃が隠れている」と大量宣伝した結果、高価な電気掃除機を買えない家庭までもが、吸い込み式の手動掃除機を使うようになったというわけだ。電動モデルが現れたために手動モデルの人気が伸びるとは。道具進化の皮肉なエピソードとして忘れがたい。

(面矢 慎介 2019/05)

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