「雪カメラ」とエンジン

雨が雪に変わり、銀世界のなか子供達の作る雪だるまの炭を見てふと閃いた《雪カメラ》。レンズを付けると“らしく”なる。ファインダーを付けたらいい感じ。望遠で一点ピントを置いたライカM用DRズミクロン脱着ファインダー。通称「眼鏡付き」と呼ばれ、近接撮影を可能にする魅力的な逸品だ。精緻な機能美は、雪が溶け氷化し崩れたボディでも凛と引き締める。三角形を乗せると元祖一眼レフ、コンタックスSらしくもなる。ただしデザイナーの見せ所のボディには難儀、溶け始める。雪遊びがデザインと機能の原型の意味と関係を考えるヒントになった。

背後の33年来のBMW R60エンジンは水平対向で、こんな“キメラ”カメラを置くのにも最適。くしくも齢は同じ還暦過ぎ。空気を切り取る精緻で冷たいメタルと対照に、空気が冷やすエンジンは温かな金属。冷たくも温かくも感じるのは、土から産まれ、共に最後は土に還るものへの共感。人類が遥か古来、慈しんできた金属。人間と身近に生きてきた素材は愛しい。雨から雪、そして氷へ。ひと時のシンデレラがメタルと出会う。

一條 厚,2016.03,vol.131

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